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2025年9月23日
事業計画書の書き方は?融資審査に通る作成方法とテンプレート活用術まで徹底解説

「事業計画書を作らなければいけないけれど、何から書き始めればいいのかわからない」「融資の審査に通る事業計画書とはどのようなものなのか」
このような悩みを抱えている経営者は、決して少なくないでしょう。事業計画書は起業や新規事業を成功させるための重要な設計図であり、金融機関や投資家への説明資料としても欠かせません。
しかし、初めて作成する方にとっては、どの項目を盛り込むべきか、どの程度詳しく書けばよいのか判断が難しいものです。そこで本記事では、事業計画書の基本知識から実践的な書き方までわかりやすく解説します。説得力のある事業計画書を作成できるようになりたい方はぜひ最後までお読みください。
事業計画書とは?作成する目的と重要性
事業計画書を作成する前に、まずはその意味と役割を正しく理解しましょう。ここでは事業計画書の定義から、実際に必要となる場面、類似書類との違いまで詳しく解説していきます。
事業計画書の定義と3つの重要な役割
事業計画書とは、これから始める事業や既存事業の今後の展開について、具体的な戦略や数値計画をまとめた書類のことです。単なる夢や希望を語るものではなく、実現可能性の高い計画を論理的に示す必要があります。
事業計画書には主に3つの重要な役割があります。1つ目は「事業の設計図」としての役割です。自分のアイデアを具体化し、実行可能な形に落とし込むことで、事業の全体像を明確にできます。
2つ目は「コミュニケーションツール」としての役割です。金融機関、投資家、ビジネスパートナーなど、外部の関係者に事業内容を正確に伝えるための資料となります。
3つ目は「経営の羅針盤」としての役割です。事業開始後も定期的に見直すことで、当初の計画と実績のズレを確認し、軌道修正の指針に活用できます。
事業計画書が必要になる具体的なシーン
事業計画書が実際に必要となる場面は意外と多くあります。最も一般的なのは金融機関からの融資を受ける時です。日本政策金融公庫や銀行は、返済能力を判断するために必ず事業計画書の提出を求めます。
次に、投資家から出資を受ける場合も事業計画書は必須です。ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家は、事業の成長性や収益性を事業計画書で判断します。補助金や助成金の申請時にも、多くの場合で事業計画書の提出が求められます。
また、ビジネスパートナーとの提携交渉や、社内での新規事業提案の際にも事業計画書は重要な役割を果たします。これらの場面では、それぞれ重視されるポイントが異なるため、提出先に応じて内容を調整することが大切です。
事業計画書と創業計画書の違い
事業計画書と創業計画書は似ているようで明確な違いがあります。創業計画書は、これから新たに事業を始める人が作成するもので、主に創業時の資金調達を目的としています。一方、事業計画書はより広い概念で、既存事業の拡大や新規事業の立ち上げなど、様々な場面で使用されます。
創業計画書では、創業者の経歴や創業動機、初期投資の内訳などが重視されます。特に日本政策金融公庫の創業融資では、専用のフォーマットが用意されており、比較的シンプルな構成になっています。
これに対して事業計画書は、より詳細な市場分析や競合調査、中長期的な成長戦略などを含む、包括的な内容が求められます。ただし、実務上はこれらの用語が混同されて使われることも多いため、提出先の要求内容を確認することが重要です。
事業計画書に必要な項目と基本構成

効果的な事業計画書を作成するためには、必要な項目を漏れなく盛り込み、論理的な構成で組み立てることが重要です。こ こでは、標準的な事業計画書に含めるべき項目と、業種や提出先に応じた調整方法について解説します。
必須8項目の詳細解説と記載のポイント
事業計画書には最低限含めるべき以下8つの必須項目があります。
1.事業概要
どのような事業を行うのかを端的に説明します。専門用語を避け、誰が読んでも理解できる表現を心がけましょう。
2.市場環境分析ターゲット市場の規模や成長性を客観的なデータで示します。3.競合分析競合他社との違いや自社の優位性を明確にします。4.商品・サービス内容
提供価値を具体的に記載します。
5.マーケティング戦略
どのように顧客を獲得し、売上を作るのかを説明。
6.組織・人員計画
事業を実行する体制を示します。
7.資金計画
必要な資金とその使途を明確にします。
8.収支計画
3年から5年程度の売上や利益の見通しを数値で示します。
これらの項目は相互に関連しているため、全体の整合性を保つことが重要です。例えば、市場規模が小さいのに売上計画が大きすぎると、計画の信憑性が損なわれてしまいます。
業種別に追加すべき特有の項目
業種によっては、標準的な項目以外にも追加すべき内容があります。飲食店の場合は、立地分析や店舗レイアウト、メニュー構成、食材仕入先などの情報が重要です。営業時間や座席数、客単価の設定根拠も詳しく記載する必要があります。
IT系では、技術的な優位性や開発ロードマップ、知的財産権の状況などを追加します。特にソフトウェア開発の場合は、開発工程やテスト計画、セキュリティ対策についても触れることが求められます。
製造業では、生産工程や品質管理体制、原材料の調達計画、在庫管理方法などを詳細に記載します。また、設備投資計画や生産能力の拡張計画も重要な要素となります。
小売業の場合は、商品構成や在庫回転率、店舗運営のオペレーション、POSシステムなどの設備投資計画を含めます。ECサイトを運営する場合は、サイト構築費用やマーケティング施策、物流体制についても詳しく説明する必要があるでしょう。
金融機関・投資家が 重視する評価ポイント
金融機関と投資家では、事業計画書で重視するポイントが異なります。金融機関は主に「返済能力」を重視します。そのため、安定的なキャッシュフローが見込めるか、担保や保証人の有無、経営者の信用情報などを詳しく確認します。特に、売上の実現可能性と経費の妥当性については厳しくチェックされます。
一方、投資家は「成長性」と「収益性」を重視します。市場規模の大きさや成長率、スケーラビリティ、競合優位性などが評価のポイントに。また、経営チームの実績や専門性、Exit戦略についても関心を持ちます。
両者に共通して重視される点は、計画の実現可能性です。楽観的すぎる計画は信用されません。保守的、標準的、楽観的の3パターンのシナリオを用意し、リスクを考慮した現実的な計画であることを示すことが重要です。また、数値の根拠を明確にし、仮説と事実を区別して記載することで、計画の信頼性を高めること ができます。
効果的な事業概要とビジョンの書き方

事業計画書の冒頭に記載する事業概要とビジョンは、読み手の興味を引き、事業全体のイメージを伝える重要な項目です。ここでは、説得力のある事業概要の作成方法について、具体的なテクニックを交えて解説します。
説得力のある事業コンセプトの作り方
事業コンセプトは、事業の核となる考え方を簡潔に表現したものです。良い事業コンセプトは「誰に」「何を」「どのように」提供するのかが明確で、読み手がすぐに事業内容をイメージできるものでなければなりません。
まず「誰に」の部分では、ターゲット顧客を具体的に定義します。年齢や性別だけでなく、ライフスタイルや価値観、抱えている課題なども含めて詳しく描写します。次に「何を」では、商品やサービスの内容を説明しますが、機能ではなく顧客が得られる価値やベネフィットを中心に記載します。最後の「どのように」では、他社との差別化ポイントや独自の提供方法を説明します。
例えば「忙しい30代の働く女性に、栄養バランスの取れた手作り風のお弁当を、職場まで配達することで、健康的な食生活をサポートする」といった形で表現します。このように具体的に記載することで、事業の全体像が明確に伝わります。
ミッション・ビジョン・バリューの設定方法
ミッション、ビジョン、バリューは事業の方向性を示す重要な指針です。ミッションは「なぜこの事業を行うのか」という存在意義を表します。社会にどのような価値を提供し、どん な問題を解決するのかを明確にします。
ビジョンは「将来どのような姿を目指すのか」という到達点を示します。5年後、10年後にどのような企業になっていたいか、具体的かつ測定可能な形で表現します。例えば「地域No.1のシェアを獲得する」「全国100店舗を展開する」など、数値目標を含めることで、より明確なビジョンとなります。
バリューは「どのような価値観を大切にするか」という行動指針です。顧客第一主義、イノベーション重視、チームワークなど、事業運営において重要視する価値観を複数設定します。これらは単なる飾りではなく、日々の意思決定の基準となるものですので、実践可能な内容にしましょう。
エグゼクティブサマリーの書き方と構成要素
エグゼクティブサマリーは、事業計画書全体を1ページから2ページに要約したもので、多忙な経営者や投資家が最初に読む部分です。ここで興味を持ってもらえなければ、詳細な計画書まで読んでもらえない可能性があります。
エグゼクティブサマリーには、事業概要、市場機会、競合優位性、ビジネスモデル、収益予測、必要資金と使途、経営チームの紹介を含めます。それぞれ簡潔にまとめ、詳細は本文で説明する旨を記載します。
重要なのは、数字を効果的に使うことです。「大きな市場」ではなく「500億円規模の市場」、「高い成長性」ではなく「年率20%で成長」といった具体的な数値を示すことで、説得力が増します。また、解決する課題と提供する価値を明確にし、なぜ今このビジネスが必要なのかを説明することも重要です。
市場分析と競合調査の書き方
市場分析と競合調査は、事業の成功の可能性を客観的に示す重要な要素です。ここでは、データの収集方法から分析手法、効果的な表現方法まで、実践的なテクニックを紹介します。
市場規模と成長性の調査方法・データの示し方
市場規模を調査する際は、政府統計、業界団体のレポート、市場調査会社のデータなど、信頼性の高い情報源を活用します。経済産業省の工業統計や商業統計、総務省の家計調査などは無料で利用でき、信頼性も高いためおすすめです。
市場規模は、TAM(獲得可能な最大市場規模)、SAM(獲得可能な市場規模)、SOM(実際に獲得を目指す市場規模)の3段階で示すと効果的です。
成長性については、過去3年から5年のデータを示し、トレンドを明確にします。グラフを使用することで視覚的に理解しやすくなります。また、市場が成長している理由や、今後の成長を支える要因についても説明を加えることで、より説得力のある分析となります。
ターゲット顧客の設定と分析手法
ターゲット顧客を明確にすることは、効果的なマーケティング戦略を立てる上で不可欠です。まず、市場をセグメント化し、最も有望な顧客層を特定します。セグメント化の軸としては、人口統計的特性、地理的特性、心理的特性、行動特性などがあります。
ペルソナ設定という手法を使い、典型的な顧客像を詳細に描写することも効果的です。年齢、性別、職業、年収だけでなく、趣味、価値観、情報収集方法、購買行動パターンなども含めて設定 します。例えば「35歳、既婚、子供2人、年収600万円、健康志向が強く、SNSで情報収集する」といった具合です。
顧客ニーズの分析には、アンケート調査やインタビュー、観察調査などの手法があります。実際に想定顧客に話を聞くことで、仮説の検証ができます。また、顧客の課題や不満を「ペインポイント」として整理し、それをどのように解決するかを明確にすることで、事業の価値提案が明確になります。
競合分析とSWOT分析の実践方法
競合分析では、直接競合だけでなく、間接競合や代替品も含めて分析することが重要です。競合企業の強みと弱み、商品・サービスの特徴、価格戦略、マーケティング手法などを詳しく調査します。
情報収集の方法としては、競合企業のウェブサイト、商品カタログ、実店舗の視察、顧客レビューの分析などがあります。また、上場企業であれば有価証券報告書から詳細な財務情報を入手できます。これらの情報を整理し、比較表を作成することで、自社のポジショニングを明確にできます。
SWOT分析は、自社の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を整理する手法です。内部環境である強みと弱み、外部環境である機会と脅威を分析し、戦略立案に活用します。
収益モデルと資金計画の作成方法

事業計画書の中でも特に重要な収益モデルと資金計画は、事業の実現可能性を数値で示す部分です。ここでは、現実的な計画を立てるための具体的な方法を解説します。
売上予測の立て方と3パターンシナリオ分析
売上予測を立てる際は、積み上げ方式とトップダウン方式の両方から検証することが重要です。積み上げ方式では、客単価×客数×購買頻度といった形で、具体的な数値を積み上げていきます。トップダウン方式では、市場規模×シェアといった形で、マクロの視点から算出します。
3パターンのシナリオ分析では、楽観シナリオ、標準シナリオ、悲観シナリオを作成します。それぞれのシナリオで、売上だけでなく費用や利益も算出し、最悪の場合でも事業が継続できることを示します。
初年度は月次で、2年目以降は四半期または年次で予測を立てます。季節変動がある業種では、その要因も考慮に入れます。また、新規事業の場合は立ち上げ期間を考慮し、最初の数ヶ月は売上が低いことを前提に計画を立てることが現実的です。
必要資金の算出と資金使途の明確化
必要資金は、初期投資と運転資金に分けて算出します。初期投資には、設備投資、店舗の内装工事、システム開発費、初期在庫などが含まれます。運転資金は、売上が軌道に乗るまでの期間の人件費、家賃、仕入れ代金などです。一般的に、3ヶ月から6ヶ月分の運転資金を確保することが推奨されます。
資金使途は具体的に記載し、見積書などの根拠資料があれば添付します。例えば「設備投資500万円」ではなく、「厨房機器200万円、内装工事150万円、POSレジ50万円、看板・サイン100万円」といった形で内訳を示します。
また、自己資金と外部調達の比率も重要です。金融機関は一般的に自己資金比率30%以上を求めることが多いため、この点も考慮して計画を立てます。調達方法については、融資、出資、補助金、クラウドファンディングなど、複数の選択肢を検討し、 それぞれのメリット・デメリットを理解した上で選択することが大切です。
損益計算書とキャッシュフロー計画の作成
損益計算書では、売上高から売上原価を引いた売上総利益、そこから販売管理費を引いた営業利益、さらに営業外収支を加減した経常利益を算出します。業種によって標準的な利益率があるため、それと比較して妥当性を検証します。
キャッシュフロー計画は、実際の現金の流れを示すもので、黒字倒産を避けるために非常に重要です。売上の回収サイクル、仕入れの支払いサイクル、固定費の支払いタイミングなどを考慮して、月次で作成します。特に、売掛金の回収期間が長い業種では、資金ショートのリスクが高いため、詳細な計画が必要です。
返済計画も含めて作成し、借入金の返済が可能であることを示します。元金均等返済か元利均等返済か、据置期間の有無なども明確にします。また、設備投資を行う場合は、減価償却費も考慮に入れる必要があります。これらを総合的に検討し、事業の持続可能性を数値で証明することが重要です。
事業計画書を第一歩に次のステップへ
ここまで事業計画書の作成方法について詳しく解説してきました。最後に、作成後のブラッシュアップ方法と、専門家の活用について触れておきます。
事業計画書は一度作成して終わりではありません。第三者の意見を聞き、継続的に改善することが重要です。特に、想定顧客へのヒアリングや、金融機関への事前相談は貴重なフィードバックの機会となります。また、税理士や中小企業診断士などの専門家に相談することで、計画の精度を高めることができます。
事業計画書の作成は確かに大変な作業ですが、事業成功への第一歩です。本記事で紹介した方法を参考に、ぜひ説得力のある事業計画書を作成してください。
